ご挨拶
ラクロスの競技ルーツは、北米ネイティブアメリカンの神聖な部族間の戦いといわれています。米国では「クリエーターズゲーム」とも呼ばれます。国でない地域であるイラコイ(ホーデノソーニー)が世界大会に参加するのはラクロスに特有な文化です。2014年マンチェスター男子世界大会で、旅券を持たないイラコイ選手団が空港で足踏みし、大会日程が変更され、米国務長官だったヒラリークリントンさんが英外務省と折衝、ようやく入国するという珍事がありました。
そのイラコイの酋長が、かつて、私たちにこう語ってくれました。「ラクロスにとって一番大切なこと、それは、現在でもなく、自分のことでもなく、チームのことでもありません。次世代、次々世代、そして7世代先の将来の若者がラクロスを楽しんでいられるかということです」。森や自然の環境を大切にして生きるイラコイラクロスの教えは、100年先の地球に生きる若者が、豊かにプレーができることを考えていくこと。自分が生きている間の閉じた時間の枠を超えて、自分が土に戻ったあとの将来にまで時間軸を広げて、持続可能な未来を思考することがラクロスコミュニティの文化である、と。
私たちは今、「クローズからオープンへ」という新しい羅針盤としての旗を立てようと考えています。オープンにということは、資本主義の中に飛び込むことではありません。スティックを振り回しフィールドを動き回ってキャッチボールしあう。その練習に膨大な時間を費やす。それ自体は、社会的には生産性のない営みと捉えられるかもしれません。しかし、その時間やそこで得られる仲間との共鳴が、私たちの人生を豊かに育むことを私たちは知っています。
今年、JLAは公益法人化します。これは、ラクロスが会員だけのものではなく、社会の公共物でもあると宣言することを意味します。私たちの主語が、このコミュニティだけではなく、社会全体に変わるのです。ラクロスの経験が、その後の人生に豊かな価値を与えていると実感する人が社会で増えてきているからです。
「ラクロスは大学生から始めて日本代表になれる」。過去、JLAは、大学生とクラブ世代の会員にフォーカスするブティック戦略をとってきました。その文化を大切に維持しながらも、未来を担う全国の地区の小学生以上のジュニア世代への普及活動に本格的に取り組んでいこうと思います。WORLD LACROSSE(国際ラクロス連盟)は、2005年以降、英米豪加のカレッジとクラブにクローズだったラクロスを、グローバルと若年層に普及する戦略に舵を切ってきました。私たちも、更に広がりのあるコミュニティをみなさんと共に創っていきたいと思います。
公益社団法人日本ラクロス協会 理事会