私のロンドンラクロス滞在記
      (love at first sight of my lacrosse splits)

渡辺貴志(日本大学OB)

第2回:「僕はHillcroftの新外国人選手」

 時は、忘れもしない3rd October。その日は何故か朝から興奮してしまって、早起きしてコインランドリーへ。その後、時間どおりに、約束の場所へ。場所は、コリーンズウッドという駅。ウインブルドンから2つほど北に行ったところで、ウエストエンドからは3、40分位かかっただろうか。

 駅の改札に待つ僕のところ彼が現れたのは約束の時間の10分後、クロスを手にティムが歩いてきた。となりにはもう一人チームメイトらしき人もいる。約束どおりに来てくれた喜び、と初対面の人と会う時に似た緊張感が一瞬の内に僕を襲う。目が合い近寄ったと同時に真っ白で大きな彼の手が「ぬっと」僕の目の前に飛び出てきた。 「うっ、、、」ちょっと出遅れた。でもすかさず僕も右手を出し彼と握手を交わした。「ハイ、この前はどうも。はじめまして私が貴志です。日本でラクロスをやっていたんだけど、今日はラクロスのゲームを見たくて来ました。よろしく。」「ハイ、僕がティム、はじめまして。タカ、日本でラクロスやっていたんだって、、、、、、、。それと、こいつがチームメイトのジャック。」「ハイ、よろしくタカ。」そんなこんな話ししただろうか。一緒に歩きながら色々なことを話しただろうか。すると、僕は何故か、彼らが持っているラクロス用具に目が行ってしまった。ティムのクロスはたしかバイパー、ジャックはカリバーだったと思う。そして、1番僕の目を引いたのがティムのバッグだった。なんと彼のバックは大人一人が入りそうな、馬鹿でかい緑に赤字のバック。しかもでかでかと「WALES」と書いてあるではないか。僕は気になり、彼のバックを指差し「これはひょっとして、ウェールズのナショナルチームの代表のバックかい?」と聞くと、横からジャックが得意げに、「そうだよ、ティムは代表なんだ。この前のワールドカップにも出場してタカの国、日本とも戦ったんだよ。」 「なにー!!!!」そうだったのか。学生時代、関東学生ラクロスリーグの2部リーグ所属だった僕としては、ナショナルチームとは無縁であったからなのか、僕にはその「国の代表」という響きに言い表せない感動を感じてしまったのであった。そして、そのジャックの言葉を横で誇らしげに頷いているティムがグランドではどんなプレーをするのか、僕の頭のなかで想像が膨らんでいくのであった。

 そして3人で色々な話しをしながら10分ほど歩きグランドへ。グランドは、大きなショッピングセンターの裏の、ラズベリーガーデンという芝生のきれいな(この国はどこでも公園は芝の緑でいっぱいなのだが、)グランドで、当たり前であるがこの時点で学生時代の練習の場の一つであった和泉多摩川の河川敷とは違う環境に圧倒されてしまったのである。グランドをよこぎりクラブハウスへ。クラブハウスには二人の長身の男達が居た。彼らはどうやらディフェンス(ロングクロスを持っていた。それも二人ともウッドタイプ)のポジションらしい。ティムとジャックに挨拶をしながら、ふたりは顔を合わせ、初対面のアジア人の僕に挨拶してくれた。とりあえず僕は自己紹介をすませ、皆でクラブハウス内へ。この国では当たり前のことだが、スポーツ施設の設備は充実していて、まるで以前に見たハリウッドのスポーツ物映画の光景で、シャワールーム、チェンジングルーム、この国では珍しい自動販売機、そして、二階にはパブが (試合後にここで本場のパイントビールをあおるわけだ)。「うーん、まいった。」僕は、その時この素晴らしい環境が見られただけで不思議と満足してしまったのであった。チェンジングルームで皆と一緒にいると、次々にチームメイトが集まり始め、僕はその都度自己紹介を。皆がそれぞれの対応で僕を迎え入れてくれ、ぼくの英語力に気をつかってくれて、ゆっくり話してくれる奴もいれば、かまわず早口でまくしたてる奴、スラングばかり使って全然何を言っているか解らない奴、でも皆どうやらこのアジア人には変な感情は抱いていないようだった。「うーん、やっぱりこれがラクロスグローバルフレンドシップなのだろう。」本当に、皆が皆、僕が以前ラクロスをしていたというだけなのにとても気さくに気を使わず自然に応対してくれのであった。

 その後大体メンバーが10人くらい揃った頃だろうか。そこにひときわ体格の良い、遠くからでも聞こえるようなでかい声で一人の男が入って来た。彼の名前はジェームズ。彼もまたWALESのバッグとキャップを被ってきた。どうやらこの チームのムードメーカー的な存在の奴である。年の頃は30歳前後。顔は若いロッ ドスチュアート似。後から聞いた話だが、職業は弁護士だという。僕は、すぐさま彼に対し、皆にした時と同じように挨拶をすると、彼は、それをあっさりこなし、いきなり質問を僕に浴びせ出した。「おまえ、ポジションはどこだ?」と、「えーと、ミ ディーです。」「グレイト!」「足のサイズは?」「10インチハーフですけど。」 「オーケー、ノーバッドだ!」と答えると、すぐさま彼は自分のでかいバックから、スパイクと、ユニフォーム、そしてショートクロスを取りだし、僕の前に投げつけた。「ちょうど今日のゲームはミディーが少ないんだ。だからタカ、お前もプレイしろ、いいだろ。」とのこと。今日は道具も無い事だし、それに2、3年はまともにラクロスをやっていない僕はゲームを見るだけにしようと思っていただけに驚きを隠せずにいた。でもそれと同時に初対面でしかも、日本人の僕に対しても全く気を使わない男っぽい彼のやり方に何か惹かれるものを感じ、それと同時に皆と同様に普通に接してくれたジェームスにはなんとも言えない温かさを感じたのであった。

 気がつくと、そこにはヘルメットを被りスパイクを履いてフル装備でラインドリルに汗を流す僕がいたのであった。「マジかよ!!!!」

(つづく)

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