Go To TOP PAGEInternational Lacrosse Friendship Games 2004

 第16回ラクロス国際親善試合

  リエゾン・レポート

*「リエゾン(liaison)」とは、”来日するチームに帯同し、チームの連絡窓口及びお世話をするスタッフ”のことです。
  本レポートは、リエゾンからの日次報告から抜粋したものです。
  外からは見えない来日チームの様子が垣間見れます。
 
US West女子 2004年6月6日(日)
                         Report by 日本ラクロス協会国際部・森部高史

 今日は、待ちに待った国際親善試合本番。
  しかし天気はあいにくの雨。止むかと思われる瞬間もあったけれど、結局振り続けた一日でした。

 女子は、8時30分に江戸川区陸上競技場に集合。ほとんどの選手が時間に間に合ったが、若干2名ほど道に迷い遅刻。国際部部長の武藤氏に迎えに行ってもらうことで事無きを得ました。

 US WESTの選手が到着すると、パンフレットをどこからかもらってきていたようで、すぐさま「わぉ!プリンストンの男の子達の写真がのってるわ!!」と騒いでいました。
(ご存知のようにプリンストンはラクロスも強いですが、学力も全米トップクラスのエリート校です。)

 およそ試合開始1時間ほど前に、江戸川区陸上球技場横にある中学校グランドでアップをしに行く選手達。彼らの補助をスタッフに任し、自分は本部役員室で他の仕事をしていると、女子コーチのブランドン氏が呼びに来る。何かあったのかと思ったら、「チームのボールが失くなってしまった。誰かが家に持ち帰ったまま忘れてきてしまったのかもしれないし、男子の方に混ざってしまっているもしれない。何か余っているボールはないかな・・・?今1個しかボールがないんだ・・・」とさすがにどうしたら良いのかという表情。
  大会本部の配慮により、予備のボールを貸してもらえることになり、事無きを得ました。

 試合時間が近づくにつれ、選手達の緊張感も高まり始め、いよいよドロー。試合開始10秒での失点にコーチも選手も唖然。
「あの失点で、あぁ、これから残りの試合時間は針のむしろだと思ったよ。だって昨日試合したU21日本代表はすごくタフだったし、今日の試合はナショナルチームでしょ。もう駄目だと思ったわ。」とは試合後の選手の言葉。

 しかしながら、要所要所で踏ん張り、前半は3対2とリードして折り返す。前半はリードして折り返したために、選手達の気分も上々。
「雨なのにこんなに観客がいてびっくりだよ。」
「どんなに叫んでも指示が届かない。」
「みんなでちゃんと伝達していこう。」
等とハーフタイムでは戦術面以外に、そんな話をしていました。

 後半が開始、サブのメンバーがほとんどいないので、選手達はベンチに戻ってくるたびに苦しそう。そんな時に声をかけるのは、やはりキャプテンのメアリー。チームが前向きな気持ちになるよう、言葉をかけ、他の選手達も言葉を返す。

 試合は、接戦になり普段は温厚なコーチ、ブランドン氏もにわかにエキサイト。度重なる接触プレーに、「何であれがファウルじゃないんだっ!!!」、「こんなのが続いたらうちの選手が壊れてしまうっ!!」等と叫んでいました。
  それでも印象的だったのは、彼自身はどんなにエキサイトしていても、選手がミスをしてしまった時、彼はその選手を叱責するようなことをせず、すぐに次のプレーを指示していることに好感が持てました。

 1点リードされたままの試合終了直前になんとか同点にして、そこでタイムアップ。国際親善試合のために延長はないということはは、試合前に確認済みにもかかわらず、この熱戦を選手達も終わらせたくなかったようで「何で勝負を決めないの!?延長戦をしましょうよっ!」と興奮気味に話をしていました。
 4日に日本に到着、次の日には2試合して、今日を迎え体調が万全ではないながらもその姿勢は立派でした。

 全日程が終了してからの陸上競技場でのパーティー。
  選手同士会話を楽しんでいました。そんな中、女子日本代表アシスタントコーチの佐藤氏とUS WESTコーチ・ブランドン氏がラクロス談義。佐藤氏からの質問は、「このチームはどれくらい練習してきたのか?」「どんなコンセプトでゲームをしていたのか?」。まず、このチームは日本に来るまでに3回しか一緒に練習が出来なかった、ということ。日本に来て試合をするたびに、少しずつ良くなって来ていた、と言っていました。コンセプトに関しては非常にシンプル。
3つの約束事があって、「パスしたら切れなさい」等、佐藤コーチ曰く、誰もが知っている非常に基本的な動きしかチームの中では要求していないとのこと。「だって3回しか練習出来なかったのだから難しいことをやっても駄目だもの。」とはブランドン氏。
  彼はその一つ一つを丁寧に紙に書いて、動き方を説明してくれました。好青年です。

ブランドン氏

 そして、もうひとつ佐藤氏から「一番お気に入りのセットプレーは何?」という質問に対し、「このオフェンスは、アメリカで一番強いメリーランドで使っているオフェンスなんだけど・・・。」とこれもまた丁寧に説明をしてくれましたが、これが非常に良くできている。説明されるたびに、佐藤氏も僕も「ほっほー」。「これは難しいけど良く出来ている」と感心しきり。
  「でもこれ選手がやるようになるまでには大変でしょ?」
  「いや、でも一度慣れてしまえば、自動的にそして継続的に出来るものなんだよ。確かに、最初は時間がかかるけどね。僕のチームではこのプレーを習得するのに1年かかったよ。」

 彼は、カリフォルニアにあるSaint Mary's Collegeのヘッドコーチ。その他のチームでも指導の経験があり、歴史上最年少のDIVISION 1 のコーチだそうです。(現在25歳)
  気を良くした彼は、「じゃあ、僕のチームでかなり点数を取ったプレーを教えてあげるよ」と言ってもうひとつ教えてくれました。
  セットプレーで難しいのは、選手がまず動きだけを覚えてしまおうとすること。
「私はここに動かなければいけない」、「次にこうしなければいけない」とやってしまうと、全く意味がないということをしきりに強調していました。何故そのセットプレーがあるのかというと、それはチャンスを増やすためであって、その過程で得点が生まれるのだから、とのこと。佐藤氏も「そうなんだよ、日本も同じ。」と同感していました。

 その後、話は彼の仕事について。彼はコーチだけで生計を立てているということ。つまりプロフェッショナルコーチ。それで十分やっていけるとのこと。そして、そのひとつの例として、メリーランドヘッドコーチのサマーキャンプのお金について。
「彼女のキャンプには大体300人から400人の参加者がいる。一人当たり、日数により違うけど3〜5日で500〜600ドルくらい。それをひと夏に8回位するから・・・ わかるだろ?でも彼女が特別というわけではなくて、そういう風にしているコーチはたくさんいるよ。ちなみにこれはサマーキャンプだけの話で、あとは別にシーズン通してみているチームとの契約もあるから。」
  ただただ驚くばかりです。
  又、彼は、「日本でのクリニックや、トップチームの選手もたくさん知っているから彼女達を連れて来ることも可能かもしれない。」とも言ってくれていました。

 その後、陸上競技場を後にしたわけですが、選手達は渋谷に飲みに行くとのこと。彼らに誘われたのもあって、僕も一緒に行くことに。
  ふと気づくと総勢日本人ホストファミリーも含め30人ほどの団体。渋谷について店を目指すも、これだけの人数が入れる所はそうそう無い。そして移動している最中にお相撲さんを見かけると、そこで撮影会が開始。渋谷駅に着いてからセンター街を通り抜けるまでに小1時間かかる始末。
  疲れ、喉の渇き、そして持ち前の陽気さがあいまって、それはそれは楽しい時間でした。引率している僕に、「本当に面倒ばかりかけてすまない」と何人もの子が声をかけてきて、「お前は金を払うな!俺達で出すから!」なんて言ってくれていました。

 結局、1時間30分ほど飲んで、10時30分頃に店を後にしました。渋谷駅でホストに会わせ、さて一安心と思っていたら、はぐれてしまった者がいることが判明。その後、探し回ることになりました。

 色々あるけれど、やっぱり彼らと過ごす時間はおもしろい。

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