2017年度世界大会派遣審判団レポート(2)・世界大会を想定した日々の活動

2017/05/14

 第10回FILワールドカップ並びに第10回IWGAワールドゲームズまで約2ヶ月になりました。世界大会派遣審判団は本大会を想定して国内で様々な準備を重ねています。英語力、体力、国際ルール対応、レフェリング技術といったオンフィールドに直結する要素を磨くことは言うまでもありませんが、オフフィールドでもたくさんの方々のご支援を賜り活動しています。
 今回はオンフィールド/オフフィールドの両面から審判員の取り組みをご紹介します。

 *第10回FIL女子ワールドカップ・派遣審判員
 *第10回IWGAワールドゲームズ・派遣審判員
 
No テーマ 審判員
1  英語力強化  五東 幸子
2  体力トレーニング  横井 佑美
3  実戦を想定した国際ルールの対応  大久保 祐子
4  心の準備  福井 美奈子
5  仕事とラクロスの両立  宮崎 彩
6  時間管理とタスク管理  阪本 一美
7  レフェリング技術のブラッシュアップ  喜嶋 志穂子

1.英語力強化
日々の活動1
[写真:香港の審判員とディスカッションする五東審判員(右端)]
 
質問1 -世界大会派遣審判団の中で随一の英語力を誇る五東審判員ですが、国際舞台で活躍するためにどのように英語力を磨いているのでしょうか。
回答1
 「字幕無しで海外のドラマや映画を見て、また、登場人物になりきって、セリフを復唱したりしています」

 「以前は、英語を勉強しようとしていたのですが、何か足りない気がしていました。海外のドラマや映画を字幕無しで見ると、内容が分からないことも多々あるのですが、字幕を消すことで、単に英語の学びだけに留まらず、表情や会話の進め方等コミュニケーションに欠かすことの出来ない部分にも気付くことが出来ています」
 
質問2 -様々な文化やバックグラウンドを持った海外の審判員と活動する際に、五東審判員が気をつけていること、工夫していることを教えて下さい。
回答2
 「日本で常識や正しいと思っていることが、世界では必ずしも正しいとは限らないという意識を常に持って接すること」

 「例えば、日本人の会話の進め方でよく『聞き上手』という言葉がありますが、欧米の方々にはこのような文化はありません。普段の日本での会話のつもりで会話を進めると、自分のことを全く話していないという事態も!今まで『正しい』と思っていたことがそうではないこともあると思っていろいろ接すると、日本と外国との文化の違いに腹を立てることなく、逆に楽しめるんですよ」
 

2.体力トレーニング
日々の活動2
[写真:トレーニングを行う横井審判員(右)]
 
質問1 -世界大会派遣審判団の中で高い走力を誇る横井審判員ですが、ワールドカップとワールドゲームズの2大会を乗り切るため、日々どのような体力トレーニングをしているのでしょうか。
回答1
 「シーズン中は、1試合を最後まで走りきれるように、以下のようなトレーニングをしています」
 ・毎日:バランスディスク、バランスボードを使って体幹強化
 ・週1~2回:5~7kmのランニングと40mダッシュ×6本
  (1試合の走行距離が日本の試合だと約5km、国際試合だと約7kmのため)

 「オフシーズンは、10kmやハーフマラソンの大会にエントリーするので、それらの大会に向けて5~20kmを走っています」
 
質問2 -体力は一足飛びに上がりませんが、モチベーションを保つために横井審判員はどのような工夫をしていますか。
回答2
 「課題をミニマムで設定することと、やはりトレーニングを継続するために自分の心が喜ぶ方法を選択するということを意識しています」

 「平日夜に走ることが多いため、最初から7km走ることは課題にせず、『ランニングウェアに着替えて一番近くの信号まで行ければOK(引き返してもよい)』と課題はミニマムで設定しています。課題をクリアした後に、その日の調子に合わせて走る距離やスピードを選ぶようにしています」

 「また、ランニング仲間と走ったり、いつもと違うコースやトレイルを走ったり、自分が楽しいと思える方法で距離を踏むようにしています」
 

3.実戦を想定した国際ルールの対応
日々の活動3日々の活動4
[左:国際審判員は国際ルールと日本ルールの対比表を作成して両者の相違点を整理する/右:国際ルールに基づきスティックチェックを行う大久保審判員(右)]
 
質問1 -九州地区から初めて世界大会派遣審判団に選出された大久保審判員ですが、国際大会を吹くにあたって、国際ルールを理解することが重要である中、実戦を想定してルールブックを読む以外に工夫していることを教えて下さい。
回答1
 「国際ルールの試合を国内で数多くこなせる訳ではありませんので、やはり実戦を想定して準備することが大切だと考えています」

 「試合によってプレーヤーの技術レベルが全く違いますし、地域性(その国独自のラクロス観)の違いがチーム戦術に色濃く反映されます。ワールドカップでは日本では見られないプレーにも的確に対応しなければいけないので、北米の高いレベルの試合だけでなく、色々な地域の試合の映像を見て勉強しています」

 「国際ルールは30分ハーフ、日本は25分ハーフと、国際ルールの方が日本ルールよりも試合時間が長いので、どうやったら集中力が1試合保持できるかの工夫も練習試合で試しています」
 
質問2 -普段は「日本語/日本ルール」、国際大会では「英語/国際ルール」で試合をしますが、ご自身の中で実際の試合で二つのやり方をどのように切り換えていますか。大久保審判員の頭のスイッチを切り換えるコツがあれば教えて下さい。
回答2
 「国内の試合では、『今日は日本ルール』、『今日は国際ルール』と試合前に意識的に頭を切り替えています。しかし、国際大会では、試合以外の時間も様々な国の審判員と一緒に過ごすことが多いので、自然と頭が切り替わっています。大会期間中のコミュニケーションは英語が基本です。英語を使うことで頭のスイッチが切り替わります」
 

4.心の準備
日々の活動5
[写真:2015年の第6回FIL女子19歳以下世界選手権を振り返る福井審判員]
 
質問1 -国際大会2大会目で、フル年代のワールドカップに挑戦する福井審判員は、文字通り『未知の世界への挑戦』です。物怖じしないメンタルが強みの福井審判員ですが、ワールドカップを想定した心の準備について教えて下さい。
回答1
 「本番で強いメンタルを持続させるため、今大会の準備期間では『脳に成功イメージをインプットすること』を意識的に取り組んでいます」

 「ジャッジ等で失敗したなと思うことがあれば、寝る前等に映像を脳内再生し、成功イメージを刷り込んでいます。ネガティブイメージを払拭することもそうですが、その失敗の瞬間に自分が何を考えていたか内省することで、自分の感情のクセに気付くことができました」
 
質問2 -国際大会は日本と異なる環境で試合に取り組まなくてはいけません。開催国によって運営方法、観客のタイプ、スタジアムの雰囲気、食事など様々です。また、大会ごとに審判団のキャラクターも異なります。これらの不確定要素をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかで大会期間中の過ごし方が大きく変わってくるように思います。福井審判員は今回のワールドカップをどのように捉えて心の準備をしていますか。
回答2
 「私自身、2年前に初めて参加した19歳以下世界大会では、日本とは異なる環境・外国人選手や審判員に尻込みした苦い経験があります。一方で、国際大会で味わった高揚感や感動が忘れられず、4年に一度しかない大舞台ですので、『準備期間中も大会期間中も楽しまなきゃ損だ!』、そんな気持ちで準備しています」
 

5.仕事とラクロスの両立
日々の活動6
[写真:デスクワーク中の宮崎審判員]
 
質問1 -普段はグローバル企業の技術職として国内外で活躍する宮崎審判員ですが、仕事とラクロスの両立の秘訣を教えて下さい。
回答1
 「現在、私は生産技術職を担当しています。私の部門には約60名の技術員が在籍しており、そのうち女性は私だけです。生産技術の仕事は奥が深く、やりがいのある仕事なので、ハードワークになることもあります。また、より良い生産体制を確立するために、工場で新しい生産技術のテストをしたり、現状の生産ラインの課題調査を行ったりします。これらは工場が停止している休日に行うことが多いのですが、『仕事モード/ラクロスモード』をしっかり切り替えてどちらも全力投球しています」
 
質問2 -ワールドカップに派遣されるには、2週間を超える休暇が必要になります。職場で上司や同僚はどのような支援をして下さいますか。また、ラクロスの審判員というご自身の活動を職場の皆さんに理解して頂くことが重要ですが、宮崎審判員は職場で審判活動をどのように『広報』していますか。
回答2
 「まず、普段からラクロスで審判活動をしていることは、常日頃から話をしています。会社の運動会などでは、ラクロスのジャージ(審判服)を着て行ったり、ラクロスのクリアファイルを使うなどして、地道に発信してます。職場でも、サッカー、野球など、スポーツをしている人も多いため、ラクロスの活動に対して理解者が多い、恵まれた環境だと思います」

 「また、職場では、『計画的に有給休暇を取ることも仕事のうち』としており、特に、今年は仕事のプロジェクトも佳境を過ぎていたため、長期の休みを取ることに対しても、理解をいただけました。むしろ、『折角のチャンスだから』と上司も背中を押してくれました。休み中に大会を100%楽しむために、仕事を計画的に前倒して今から準備を進めてます」
 

6.時間管理とタスク管理
日々の活動7
[写真:主審として試合前ミーティングを行う阪本審判員(中央)]
 
質問1 -『会社員・妻・母・審判員』と様々な役割を持ちながら、日々精力的に活動している阪本審判員ですが、ワールドカップで高いパフォーマンスを発揮するために、普段どのように時間管理をして、ご自身のタスクをこなしているか教えて下さい。
回答1
 「ひとつひとつのタスクに長い時間を割けないので、短時間で効率的にすることを心掛けています。小さな積み重ねが大きなステップに繋がると考えています」
 
質問2 -ご家庭の中でご家族はどのように阪本審判員をサポートしてくれますか。また、阪本審判員はご家族のためにどのような点に留意して日々の生活を送っていますか。
回答2
 「私が土日にラクロスの審判活動をする際、娘はラクロス試合会場に付き合ってくれます。夫は土日にラクロスで私が家を不在にしても、娘との時間やおひとり様の時間をエンジョイしてくれています」

 「とは言え、家族との時間は大切にしたいので、ラクロスに集中したいときは早起きして時間を作り、家族が寝ているうちに活動します。家族との時間をなるべく確保するためです」

 「他には、毎日娘と手を繋いで寝る、娘の好物のアイスクリームを切らさず買っておく、外食はあまりせず、手作りで食事を用意するようにしています」
 
※阪本審判員のある日のスケジュール
5時  起床
6時  ランニング、語学アプリで英語勉強
7時  朝食準備、掃除、後片付け、着替え
8時  通勤電車で国際ルールの勉強
9時

17時
 業務時間
18時  通勤電車で国際ルールの勉強
19時  食料品の買出し、入浴、夕食準備
20時  夕食、後片付け
21時  ラクロスの動画を見る、リラックスタイム
22時  就寝

7.レフェリング技術のブラッシュアップ
日々の活動8
[写真:取得したデータを分析する喜嶋審判員]
 
質問1 -様々な視点からレフェリング技術のブラッシュアップに取り組む喜嶋審判員ですが、ワールドカップへ向けた取り組みについて教えて下さい。
回答1
 「普段は関東地区で審判活動をしています。ありがたいことに関東地区では毎週たくさんの試合が開催されます。中高生、大学生、社会人、日本代表と様々な試合を吹いて本大会に備えています」
 
質問2 -今回のワールドカップに向けて新たに始めた取り組みはありますか。なぜ、新たな試みを始めたのでしょうか。
回答2
 「レフェリングの効率的なレベルアップを目指して、『レフェリングの見える化』に挑戦しています。試合中に審判員に何が起きているのか。審判員自身も知っているようで、知らないからです」

 「フィールド審判員として派遣された試合で、新たな取り組みとして『①心拍数の計測、②GPSによる走行距離や走行コースの計測、③カメラ付きサングラスを装着して視野の撮影』を行っています」

 「心拍数は『心肺機能の負荷状況』と『心の動き』を表すバロメータと考えます。そして審判員の視野は『思考を映す鏡』です。これらの要素を見える化し、新たな視点から審判員のレベルアップの可能性を模索しています」
 

 次回は5月ゴールデンウィークに、関西地区で開催した女子22歳以下日本代表チャレンジマッチで実施した、「世界大会派遣審判団強化合宿」についてお伝えします。

■2017年度世界大会派遣審判団レポート
 *第1回・日本からの世界大会派遣審判員 (2017年4月12日掲載)
 *第2回・世界大会を想定した日々の活動 (2017年5月14日掲載)

■関連レポート
 *2015年・第6回FIL女子19歳以下世界選手権大会・派遣審判員の活動
 *2015年・第7回APLUアジアパシフィック選手権大会・派遣審判員の活動
 *2013年・第9回FIL女子ワールドカップ・派遣審判員の活躍
 *2013年・第6回APLUアジアパシフィック選手権大会・派遣審判員
 *2011年・第5回FIL女子19歳以下世界選手権大会・派遣審判員
 *2011年・第5回APLUアジアパシフィック選手権大会・派遣審判員
 *2009年・第4回APLUアジアパシフィック選手権大会・審判員レポート(アーカイブページ)
 *2005年・第7回IFWLA女子ワールドカップ・派遣審判員(日本ラクロスの四半世紀)
 *2003年・第3回IFWLA女子19歳以下世界選手権大会・審判派遣実績(日本ラクロスの四半世紀)
 *1999年・第2回IFWLA女子19歳以下世界選手権大会・審判派遣実績(日本ラクロスの四半世紀)
 *1997年・第5回IFWLA女子ワールドカップ・審判宣誓(日本ラクロスの四半世紀)
 *1995年・第1回IFWLA女子19歳以下世界選手権大会・審判派遣実績(日本ラクロスの四半世紀)


Direction by 2017年度世界大会派遣審判団リーダー・喜嶋志穂子